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2017年 06月 27日
昨日、一昨日、陸前高田市今泉地区に行ってきました。
2011年3月11日14:46に日本観測史上最大規模の「東北地方太平洋沖地震」が発生しました。その日の夕方、僕は福岡から東京に移動の予定でしたが、大きな地震が関東地方で発生し欠航になったと航空会社からのメールで地震のことを知りました。 26歳まで東京に住んでいたので、大きめの地震には慣れっこで、あまり気にもとめずに小倉の事務所で仕事をしていたところ、ネットから目を疑うような被災状況が伝わってきました。その後もテレビやネットで悲惨な映像を目の当たりにして、しばらくは仕事が手がつかず、気がつけばセルフビルドが可能な積み木の応急仮設住宅の設計を何案も考えていました。 そして、確か地震から1週間後くらいに、当時非常勤講師をしていた九州工業大学の徳田光弘准教授に何とか東北のために役に立てないか相談したところ、徳田さんの研究者のつてを辿って、防災関係の研究者を紹介してもらい、一緒に東北に乗り込み、いくつかの行政に「積み木の仮設住宅」の提案を行いました。断熱性に優れ可変性が高く、リサイクル・リユースが可能で、大工さんなどの専門職でなくても施工できるので評判は大変良かったのですが、様々な理由で実現には至りませんでした。 そんな中、陸前高田市今泉地区の住人の方々とご縁ができ、小さな積み木の家という地域集会所が実現しました。 小さな積み木の家は、住民と一緒につくったので、地域住民にとても愛されており、現在も使い倒されています。 建設に当たっては、3人の地元の方々がキーパーソンになりました。 一人目は佐藤直志さん(84才)。震災で息子さんを亡くし、その次の日にその息子さんの娘さんが誕生しました。津波で家は半壊状態でライフラインもストップしてしまいましたが、応急仮設住宅に入らずに半壊の住宅で生活を続けました。職業は木こり。津波で海水に浸かってしまった木を自ら伐採し、自力で最初に復興住宅を建築。その姿はドキュメント映画(先祖になる)にもなりました。 二人目は紺野健一さん(71才)。大工さん。津波で家が完全に流されてしまいましたが、佐藤邸に続いて自力で復興住宅を建てました。ノートに走り書きで書いた図面を元に、我々で設計図をおこし、確認申請などの申請業務も代行しました。 三人目は菅野剛さん(67才)。醸造家。醤油や味噌、お酒など本職の職能に加え、とにかく器用。大工仕事もこなし、二人に続いて地域で3番目に復興住宅を建築。地域のリーダー的存在。テレビなどで度々、行政との厳しい折衝の場面が放映されているが、とても温厚で常に地域住民のことを考えている人望が厚い方。 三人に共通しているのは、農業を兼業しており、田んぼや畑で自分で食べるものはほとんどつくっていること。 長い行政との折衝の末、高台移転が決まり、菅野さんのご自宅とその敷地内に建つ小さな積み木の家が立ち退きを強いられてしまいました。 僕や徳田さんに相談せずに解体する訳にはいかないと連絡を頂き、今回、徳田さんと一緒に陸前高田に行きました。神妙な話しはせず、常に笑顔で冗談を言い合いながら、一泊二日佐藤さんのご自宅にお世話になり、8月の解体を何かイベントにできないかみんなで話し合いました。その他は、みなさんがつくった食材による料理やお酒を頂き、津波に流されてしまったお堂の再建のために、佐藤さんについて行って森から木を切り出してきました。 84才で小柄な佐藤さんは今でも現役で、僅かな隙間に狙い通り木を倒し、3メートルくらいに切った樹齢50年の丸太をロープやてこの原理を使い、ひょいっと運搬機に載せて行きます。その動きに無駄はなく神憑っていました。 平安時代からの歴史を持つこの今泉地区では、震災前に約400世帯の住民が住んでいましたが、佐藤さんの隣の親戚の家を含めた4件以外、復興住宅は建っていません。埋め立てが完成するのは2019年秋。造成に要した費用は1世帯当たり約5000万円。それでも再建の雲行きは怪しいようです。 みなさん、世間では高齢者という年齢なのに、自らの力で家を再建し、米や野菜、酒までつくって、毎日、相互扶助しながら笑顔でたくましく生きています。 形としてはボランティアとして乗り込んだのですが、実際は逆に「生きる力」を見せつけられ、元気と勇気をもらいました。 そんな素敵なみなさんと8月の悪巧みを考えています。 現在の小さな積み木の家 と 木こり体験
by masao_yahagi
| 2017-06-27 23:59
| 建築
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