建築家と職人は同じ分野ではありますが、通常、直接の繋がりは持ちません。
建築家という仕事は、自分の手で実際の建物をつくる訳ではなく、多くの職人さんがつくります。その辺が芸術家や音楽家と違うところです。
ですから良い仕事をしようと思えば、必ず腕の良い職人さんの手が必要です。しかし、腕の良い人は、当然、費用も掛かります。お客さんは良いレストランや寿司屋に行くときに、当然、それなりの費用を払うことを覚悟されますが、建築の場合、残念ながらそうはいきません。
住宅であれば、一般的な年収によって支払い額が決まってきます。事業物件も、今のような先行き不安な情勢であれば、あまり楽天的な事業計画書では融資がおりません。そうすると、ほとんどの場合、できるかできないか(どちらかというと出来ない寄り)ギリギリの予算になってきます。
それでも良い建て主さんの場合は、荒波を覚悟で引き受けて頑張ります。しかし、そこに大きな矛盾が生じます。良い仕事をしてくれる職人さん達を大切にしたいと思いますが、現実問題としてかなり厳しいコストダウンを強いられます。もちろん設計の工夫でもコストダウンを図りますが、最後は職人さんに頑張ってもらうような状況になっています。
大手ゼネコンは、かなり安い予算で受けて、下請業者さんが泣いています。
また、建築家が設計する物件はそれなりに手間が掛かるので、なかなか安い金額では受けてもらえません。当事務所では本当に良い仕事をしてくれている職人さんには、直接指名をして、受注する工務店が変わってもお願いしています。そこで良い仕事をしてもらえれば、その工務店さんから別件の仕事ももらえますし、当事務所からも継続してお願いできるので、多少、コストも下げてもらえます。
今まではそうして何とかローコストでも頑張ってきましたが、最近の予算は更に下がり傾向で、職人さんからも「これ以上は限界」という声が出始めています。かと言って、いい加減な仕事をする人にはお願いできません。品質とコスト、どんな分野でもある問題かと思いますが、常に悩みの種です。アイディアはこちらで考えるととしても、その辺りの気持ちを共有できる建て主さんとしか、ローコストができない状況になりつつあります。
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