午前中に現場監理に行って、午後一人静かに事務所で仕事をしていると電話が鳴りました。
松山将勝氏から、白川さんのオープンハウスへのお誘いでした。何かの手違いで当事務所に届いていなかったらしく急遽連絡してくれました。
白川さんは私の師匠の渡辺真理氏の大学の同級生。北九州出身で、東京で活躍されておりましたが、今年から地元に拠点を移し、自邸兼事務所を建築されました。
白川さんの視点は、他の人と全く違います。それでいてとても鋭くユニークでどこかにユーモアを感じます。「男女個用機械均等法の家」は、夫婦別姓のご夫婦の住宅ですが、ベットルーム、机、浴室、トイレまでが完全にミラー反転した形で対に位置する住宅で、必要に応じてカーテンで仕切ります。
今回の自邸兼事務所は、自分の価値観や視点では絶対に出てこない空間でした。今の世の中、予想できないこと、圧倒的な個性など滅多にないと思っておりましたが、白川さんは別でした。
壁と同じサイディングを屋根まで貼っている切妻の外観、本来床に貼るカーペット(黒)を壁と天井面に貼り、グリーンのモザイクタイルを床と水回りに貼ったインテリア、土手のようなロフトスペース、街灯から光を拝借するための窓、二つのデスクスタンド以外ない居間の空間、絵のような赤いパネルの裏に隠されたにじり口の向こうのトイレ、一見突飛なように思われるそのジャスチャーは、体験すると非常に心地よく五感に訴えてきます。階段など人体のスケールに縛られる空間寸法も法規ギリギリでありながら、緻密にデザインされています。
学生のお手本になる空間ではないかも知れませんが、非常に奥深い思考や感覚でつくられた、ある種建築の枠組を超えている空間のように感じました。
design&art系ブログランキングへ投稿